好きな時に好きなものを好きなだけ。
自由気ままにのらりくらり。大好きなお友達を撮っています


撮らせて頂いた優しい友人たちに最大級のキスを!
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    No.4

     

     

     

    眠れなくなってしまった夜行船の窓辺で、星々が奏でる信号標をつなげて時間を過ごした
    波音に交じって、時折月光とは違う光が差し込む
    その度に膝上に広げた少女たちの名簿が静かに光った
    同封されていた友人の、少しの間あの仔たちをお願いね、という細い字を何とはなしに撫ぜる

     

    それは彼女たちに逢う前夜の事だった

     

     

     

     

     

     


    黒曜という少女は、その名に似て独特で美しい世界で生きている様だった。

     

     

     

     

     

     

     

     

    「先生って、海鳥<ショアバード>の匂いがしますのね」

     

     

     

     

     

     

    1回目の下校チャイムが鳴ったばかりの時間だった。帰宅前だろう彼女からの突然の問いかけに、私は少しばかり驚いた。

    黒曜という少女は、他の仔たちよりも少し警戒心が強いように感じていたので、まさか話しかけられるとは思っていなかったのだ。

    「……そうだろうか」

    「えぇ」

    どんな香りだろうと、袖口を嗅いでみるも、よく知る洗剤の香りしか私にはわからなかった。

    よくわかからず首をかしげる私に、彼女は「いやですわ、先生ったら」と小さく笑った。

     

     

     

     

     

     

     

     

    一瞬の出来事だった。

    彼女は近づいてきた時と同じように、スルリと距離をとると、なんでもないことの様に話始めた。

    「ほら、やっぱり。海鳥<ショアバード>の香りがしますわ」

    「……あぁ、ここにくるのに船に乗ったからかな」

    その時の潮風の匂いかと言うと、黒曜は呆れたようにため息をついた。

    「海の匂いではなくって、海鳥<ショアバード>の匂いですわ」

    少女と言い合っても仕方がないので、私は逆らわずに相槌を打つに徹することにした。

     

    「航海にはどれくらい征かれたことがありますの?」

    「…航海?」

    「えぇ」

    またえらく話が飛んだな、と思った。

    しかしこの時期の少女にはよくあることなので、私はあまり気に留めないことにしている。

    「期待に添えなくて悪いが…航海はないかな」

     

     

     

     

     

    「あら、三毛は海の守り神だと思ってましたのに」

    「守り神?」

    「ええ。三毛の牡を乗せて海に出ると、その船は守り神の加護を受けて、無事に港に戻ってこられるんでしょう?」

    何の話をいているんだろうか。

    心の中でますます首を傾げながらも、私は彼女の言葉にじっと耳を傾けた。

    近くで廊下を走り抜ける軽い足音が鳴った。蝉の声が一定のリズムで聞こえている。

    雲の流れで、天窓から射す光がときおりまばらに陰る。

    「先生がいらっしゃると聞いて、海での冒険譚を楽しみにしてましたのに」

    「……いや、冒険というほどの物語は持ち合わせていないね」

    「そう…」

    彼女は私の視線の裏側を見ようとするように、じっと視線を寄こしてきた。

    それは野生動物が品定めをする時の、瞳の強さに少し似ていた。

    「残念ですわね」

     

     

     

     

    「あら、蜜雪が呼んでるわ」

    私の耳には何も聞こえなかったが、黒曜はその形のいい耳をピクリと動かして声の場所を探しているようだった。

    やがて、友人の居場所が分かったのかスルリとしなやかな動きで歩きだした。

    「さようなら、先生。ごきげんよう」

    私は彼女の細い背中に、気を付けてかえるようにと反射的に声をかけた。

    そのまま彼女が角を曲がるまで、ぼんやりとその姿を見続けた。

     

    遠くで2回目の下校チャイムが鳴った。

    生徒たちも帰宅したのか、いつのまにか静かだ。

    私も帰り支度をするために前を向いて階段を上り始めた。

     

     

     

     

     

    23:30 / tortoiseshell /
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